判断力の翳り

合理的選択

「君子豹変す」と言いますが、いっぱしの人はものごとに拘りすぎて自滅するようなことはないと言う事です。

豹変とはやたらに考えが変わると言う意味ではなく、合理的な選択をそれまでの方針に関わらず必要な時に冷徹に実行出来ると言う意味です。

人間は新しい考えがそれまでの主張と整合性がとれなくなると、古い主張を知っている周囲の人の目やそれまでの自分自身の拘りの大切さなどを気にするあまり、新しい考えに対する評価を曇らせることがあります。

また多くの人は、従来の考えに拘るあまり新しい考えを持つこと自体を自ら受け入れないと言う傾向を持ちます。

特に古い考えの上手く行った時期が長かったり、その時期に充実感があったりすると、ますますそれを変える事に抵抗感を持つものです。

更に新しい考えを持ったり、それをモノにするために要する多大な労力を考えると現状に甘んじたいと言う考えに落ち着きがちなものです。

しかし変遷する相場の様相に対して合理的な手立てを取らずして、比較的安定した立場をもちつつ市場にいつまでも居続けることは困難です。

「こだわり」にはもちろんメリットもありますが、合理性を否定するような「こだわり」にはデメリットしかありません。

そのデメリットは損失と言うリスクの要因となるものです。

正常性バイアス

最近よく使われる脳科学の用語に「正常性バイアス」というものがあります。

これは自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう本能的特性のことです。

人間は目の前のストレスに耐えられない時に、そのストレスから自分の精神活動を守るためにこの正常性バイアスを働かせる傾向があるようで、精神的ストレスに弱い人ほどこれが発動される機会が多くなるものと思われます。

精神力の弱い人、つまり弱い人間の特徴は現実を受け入れられず、場合によってはその現実から逃避しようとする人です。

女性が男性より人間として強いとされる理由の一つに挙げられるのは現実を受け入れる能力の高さだと言われています。

女性の脳構造自体が男性に比べてそのようになっていると言う指摘もありますが、女性は生理(月経)、処女膜の破瓜、妊娠出産と人生の節目節目で現実を受け入れる必要があるのに対して、男性はいつまでも子供のままで生きて行けると言う事もあります。

また、幼児帰りと言う精神障害が女性に多かったり、その他の精神障害も比較的女性に多いのも、男性には基本的にかかわりの少ないストレスの多くが日々のしかかってくるような女性の社会環境があると思います。

男性が脳天気に社会で生きているのに比べて、女性は社会的なハンディを持っているわけですが、その社会的なハンディに男性よりもしたたかに適応しています。

男性投資家はまず女性と比較して現実回避の傾向がある自分の弱点を見つめてみる必要があるかもしれません。

昔出合った多くの中小企業経営者はみな社長室に神棚や仏像や経営理念などを祭っていました。

明日の事を真剣に考えだすとリスクばかりが見えてしまう経営と言う孤独な業務では、なんとかなると言う楽観的なバイアスがないと先へ進めません。

経営者と言うのはある程度の楽観的な気持ちがないとやってゆけない孤独な商売です。

投資家も悲観的な未来ばかりを気にしてリスクを数えてばかりでは明日の投資の勇気を持つことすら出来ませんが、かといって現実を無視したような都合の良い夢が利益をもたらすはずはないので、希望はモティベーションを維持する程度に抑えて、都合の悪い現実から目をそらさない勇気だけは持っておく必要があります。

もし資金が底を尽きかけているのに明日は一発逆転で何とかなると思えたとしたら、もし目の前で非常に危険に損失が拡大しているのに今に逆転して解消されると思えるとしたら、そしてそうした見通しが合理的な根拠のないものだとう薄々わかりつつ成すすべもなく幸運にすがろうとしているとしたら…。

夢のような根拠のない感情を完全にリセットして危機から脱出するためになすべきことを行わなければなりません。

合理的に物事が見えない人は、すでにそうした姿勢が相場からはじき出されているのだと言う現実すら見えなくなっているのかもしれません。

こだわり

新しいものが受け入れられないのも、都合の悪いことを無視したり過小評価するのも、変化を恐れる気持ちです。

変化を避ける気持ちが強くなると、おかれた自分を客観的に判断できない、現実を受け入れない、といった頑なな感情に支配されてしまいます。

平常心が求められるトレードでは、利益追求と言う合理性から離れた感情があればあるほどチャンスを遠ざけ、リスクに対処を遅らせて、結果として利益から見放されてゆきます。

如何に過去に成績の良かった方法でも、如何に自分で時間と労力をかけた大切な手法でも、如何に尊敬する人から伝授された投資法でも成績が悪くなればいずれ手放すしかないのですが、こだわりや執着が強ければ手放すタイミングがどうしても遅れてしまいます。

そのタイミングの遅れが時として大きな損失を生むことになります。

投資家は多くの思いこみやこだわりを持って投資を行っていますが、それらの強さによっては本来の利益が遠のいている可能性があります。

利益追求のために不要なものや危険なものが感情の中に溜まりこんでいると、それがトレードの質をどんどん劣化させます。

思いこみ

現実を見ることのできない心の動きの一つに思いこみと言う感情があります。

これはああなるはずだ、この原因はこうに違いないと言う経験に基づいた予測や推測の感情です。

こうした推測・予測にも自分に都合の良い希望的なものが大きく働きます。

典型的な価格パターンのフォーメーションのサインと自分の手法示すシグナルが同じだったり、参照している複数の指標のすべてが同じ方向を示したりすれば、仕掛けを行った後で目の前の相場の動きが当初の予想に反したものになってもその現実は簡単には受け入れられないものです。

過去の成功体験や幸運体験と似た場面に遭遇すると、その過去の体験に照らしてこうなるに違いないと言う思い込みが起こりがちです。

しかし、それが「幸運」であったと言う時点で「幸運」の意味を考えれば、「思いこみの」客観的な根拠は薄かったあるいはなかったと言うことになります。

  判断力のチェック

過去の経験や、インパクトのある感情、衝動、変化を回避したい気持ちなどいろんな要素で、目の前の現実を曇らせる感情は次々に沸き起こってくるものです。

思わぬ利益を得て気持ちが高揚していたり、逆に損失を防ぎきれずに不安に陥っているような時には特に正常な判断力を失って、理屈の通らない判断を受け入れてしまいます。

そういう時はさんざん考えたり悩んだりしているようで、実は思考が停止しています。

結論の出ない問題の前でいつまでも堂々巡りしたり、逆に安易な答えを選択する時、人間は思考が停止しているのです。

メンタリティのもたらすリスクを避けるためには自分の判断力がきちんと機能しているかどうか、停止していないかどうかをトレードの局面局面で自問してみるべきです。



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