寿命を延長する薬 ラパマイシン

寿命延長薬 ラパマイシン

ラパマイシン(Rapamycin)またはシロリムス(Sirolimus)は、微生物によって生産されるマクロライド化合物の一つです。 この薬は臓器移植による拒絶反応の抑制・予防やリンパ脈管筋腫症の治療のために医学分野で使われているものです。 ヒトにおいては免疫抑制機能を持ち、腎臓移植の拒絶の予防において特に有用とされていて、インターロイキン-2の産生を低下させることによってT細胞およびB細胞の活性化を阻害する効果があります。

またこの薬は冠動脈ステント(英語版)のコーティング剤としても使われています。

ラパマイシンは1972年にSuren Sehgalらによって、イースター島の土壌から発見された放線菌(Streptomyces hygroscopicus)から初めて分離されて、イースター島を意味するポリネシア語の「ラパ・ヌイ」のラパと、「菌類から生じた抗生物質」を意味する接尾語のマイシンとを組み合わせてラパマイシンと名付けられ、当初は抗真菌薬として開発製造されていました。

しかし、その後強力な免疫抑制作用や抗増殖作用などがかくにんされまた、1999年9月にアメリカ食品医薬品局によって認可されたことからその使用目的は変化しました。 商品名はラパリムス錠1mg(ノーベルファーマ)。
日本国外ではラパミューン(Rapamune)としてファイザー(以前はワイス)から販売されています。

2009年の研究では、このラパマイシンを与えられたマウスは与えられる前に比べて寿命が28~38%伸長し、最大寿命が全体で9~14%伸長しました。 この研究の注意書きによると、実験は生後20ヶ月の成熟したマウス(ヒトに換算すれば60歳前後)で行われたもので、この結果は、一般的な延命策となどとは違って、すでに高齢化しているヒトの寿命を伸長させる可能性を示唆していると言われています。 。

哺乳動物の寿命を延ばした初の薬

50年ほど前に人類の近代化の影響から隔離さえた南太平洋の孤島で採掘された一本のサンプルケースに詰められた「土」の中に潜む細菌が人類に夢を与えるかもしれない貴重なサンプルになるとは、当初は誰も予想しえなかったことです。

現在注目されているこの物質の効果は、「さまざまな動植物の寿命を延ばす」というものであり、加齢学にとっては「音速の壁の突破に匹敵する待望の成果」ではないかともささやかれています。

マウスの実験で成果を上げたラパマイシンは「哺乳動物の最長寿命を延ばした初めての薬」でした。

「最長寿命」とは、ある集団の中で最も長生きした上位10%の平均値であり、その延びは「老化が抑えらた証拠」と考えられるものです。

マウスでの実験(2009)によれば、ラパマイシンの薬が投与されたグループは、雄で9%、雌で14%、平均で12%の最長寿命の延びが見られ、これは人間の寿命に当てはめれば100歳以上に相当する効果が表れた者でした。

加齢学者たちは、かねてより「老化を抑える化合物」の発見を夢見てきましたが、ラパマイシンの可能性は単に寿命の延長だけではなく、老化の抑制にともなう多くの疾患(白内障や糖尿病、ガンなど)の発症や進行を総じて遅らせる高価が期待できるのです。

ラパマイシンは、こうした効果を薬剤でもたらせる可能性のあるものとしては現時点で最も有力な候補であると言われています。

寿命を延ばすカロリー制限

今まで、カロリーを制限すること(ある種の飢餓状態のストレスをたもつこと)は動物実験から、寿命を延ばすとともに、それにともなう疾患の発症を遅らせることがよく知られていたのですが、そうした状態で長生きできる理由として有力な説は飢餓状態によって老化に関わるあるタンパク質の働きが抑制されるからだと言われています。

そのタンパク質は、TOR(Target of Rapamycin)ラパマイシン標的タンパク質)というもので、このタンパク質はラパマイシンの働きを標的として阻害する働きをするのです。

TOR(ラパマイシン標的タンパク質)には、二面性があり、それは人の成長期の成長促進にとって極めて重要な物質であると言う一面と、成長期を超えて長く活性の作用が続くと、今度は逆に細胞の機能を阻害することがあり、組織が破壊されると言う相反する一面です。

「成長」と「老化」、じつはこの2つの現象は実は同じ現象ではないかとする見方があり、この見方では両者はその働く時期が異なるだけで、繁殖期までが「成長」であり、それを過ぎると「老化」として働いているのにすぎないとされます。

つまり、「老化を遅らせる」ということは、繁殖期後の「成長を阻害する」という側面があるということで、TOR(ラパマイシン標的タンパク質)は、基本的に「成長を促進する」ものであり、それは同時に「老化を進める」ものであるということになります。

これに対して、延命の期待のもたれるTORが阻害しようとする「ラパマイシン」自体は、逆に「成長を阻害する」わけですから、それは「不要な老化を遅らせる」ことにつながる効果があると考えられるのです。

TORと飽食

若い時にはTOR(ラパマイシン標的タンパク質)に活性化してもらい、成長期を過ぎしまえば、今度はラパマイシンが成長を抑えてくれれば良いわけですが、TOR(ラパマイシン標的タンパク質)の活性は年齢を課されてもたいがい上がったままであり、このためゆえに成長の衰えたはずのヒトでも老化だけが加速するのです。

その理由の一つに「飽食」の影響が挙げられています。

TOR(ラパマイシン標的タンパク質)、食物の摂取量に合わせて、それを成長を促そうとする、つまり老化を進めようとする物質なのです。

一方、ラパマイシンの方は食が欠乏した時に成長を促そうとするTORの働きを抑ようとするメカニズムが働きだすようです。

カロリー制限によって、一時的にでも飢餓状態を体内に生み出せば、自然とラパマイシンがTORを抑制しようとするのです。

TORが成長促進と言う働きはどこが問題なのかと言うと、細胞の成長は促すもののTORはそれによって生じる「損傷したミトコンドリア」や「不全化した細胞」などの不要物を整理できないのです。

このため一部のタンパク質を過剰に作りすぎてしてしまったりしてその異常な成長が周囲に悪影響をおよぼしたり、作られすぎたタンパク質は凝集して厄介なゴミとなったりすることになるわけです。

たとえば、動脈硬化の原因となる平滑筋細胞や、骨を破壊する破骨細胞、腫瘍などの好ましくないタイプの増殖をも引き起こすのです。

一方、食が欠乏すると、TORは途端に働きを抑えるため、ラパマイシンの働きが優先されるのです。

ラパマイシンによって成長を抑えられた体内では、TORの働きで生み出された厄介ものともいえる細胞などの後処理が始まります。

「自食作用」と呼ばれるのがその清浄作業であり、損傷したミトコンドリアは修復され、正常に機能しなくなった細胞は分解され、リサイクルへと回され、さらに腫瘍でさえ何かの部品として活用されて、体内のゴミは新たな資源として活用されていくのです。

一般に、細胞が『生存の危機』と言うストレスにさらされると、TORの活性は下がり、タンパク質の生産と細胞の増殖が抑えられ、細胞は節約した分の資源をDNA修復などの『防御』に振り向けられるようになるようです。

飢餓状態がTORの活性を抑制

飢餓状態がTORの活性を抑えることは、1990年代半ばに見出されたことなのですが、飢餓が長寿につながること自体は、観測などからもっと早い時期から指摘されていました。

1935年、若いラットに与えるエサを減らすと非常に長生きすることを示したのは、栄養学者のマッケイ(コーネル大学)である。以後、こうしたカロリー制限が酵母からクモ、イヌやサルなど幅広い生物種で最長寿命を延ばすことが示されてきた。

長期的にカロリー制限した高齢のアカゲザルは、並外れて健康で、実年齢よりも若く見えるそうです。

そのメカニズムとしてTORの働きが機能が明らかになり始めたのは2000年代初めで、2003年、ハンガリー人の研究者ヴェライはTORの働きを遺伝子操作で阻害することで線虫の平均寿命を2倍に延ばすことに成功しています。 また、たまたまTORが阻害される遺伝子変異を起こしていたマウスの寿命は、30ヶ月から5年にまで延びたと言います。 TORとラパマイシン、そしてカロリー制限の関連の解明は、寿命延長の夢の薬の開発の一つの希望となりました。

TORの活性を抑制するラパマイシン

そんな中で2009年に発表された「ラパマイシンを与えたマウスは、与えなかったマウスに比べ、平均余命が老齢の雄で28%、雌で38%も延びたのだ!」と言う成果は歴史的なものであったとされているわけです。

寿命の延長をコントロールするためにカロリー制限をする…つまり食事を相当に制約するというのは飽食に慣れた現代人に示すべき長寿法としては非現実的なものかもしれず、その意味ではラパマイシンの働きをヒトの寿命操作にいかせるような薬品の開発は待ち望まれるものです。

ラパマイシンの研究で興味深いのは、実験の対象が「かなり老齢のマウス」だったということです。

これはたまたま起こった現象のようで、薬をマウスのエサに調合するのに手間取ったことで、マウスにラパマイシンが投与ときそのマウスはすでに20ヶ月(人間でいえば60歳)になっていたそうです。
そのため、「誰一人として、うまくいくとは予想していなかった」と言う老齢マウスの延命が確認されたのです。

つまりこのことは「これはラパマイシンが、一生の後半あるいは終盤において効果を発揮することを示唆したものなのです。

現在、TOR(ラパマイシン標的タンパク質)を阻害すると、さまざまな生物で寿命が延びるという事実が明らかになってきています。

  長寿命薬開発の第一歩

現在のところラパマイシンが延ばす寿命は、マウスの実験から人間に換算すると平均5~10歳に相当するそうですが、これは一つのステップであり、老化のメカニズムはこの研究以外でも色々と指定されており、そうしたものの成果が複合されれば更に大きな寿命の延びもきたいできるものです。

ラパマイシンには現在のところ「血中コレステロールを上げたり、貧血を起こしたり、創傷の治癒を妨げるなどの副作用」があります。

このため現在は特殊な症例の治療用にその用途が限定されているのです。

今後はそうした薬剤としてのマイナス点を改善する研究が待たれています。

食べないと言う方法でTORを抑制する場合にはラパマイシンを投薬したような副作用はもちろんないわけで、そうした関連の研究が今後精緻に解明されれば、一般の人に簡単に適用できる長寿命薬としての発表も期待されるわけです。



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