江戸時代 大坂堂島の米取引、2項目の話題

日本の相場取引

大阪の中之島は淀屋によって1619年に開拓された中州がルーツで、その後は広島藩や熊本藩などの有力大名を中心に100にものぼる諸侯の蔵屋敷が立ち並びました。
ずらりと並んだ蔵屋敷は、コメの拠点倉庫という機能ばかりではなく、参勤交代の途中、藩主が泊まれるような御殿から武士の居宅である屋敷や長屋までありました。

この各藩の「大坂蔵屋敷」は、倉庫内のコメの証券である「米切手」の発行を行い、米切手持参人とコメとの交換や代金の送金を行う各藩の金融窓口としての重い役割を担っていたため、その構えも非常に立派なものでした。

堂島米会所のコメ市場では、現物取引は「正米取引」(しょうまいとりひき)、また先物取引は「帳合米取引」(ちょうごうまいとりひき)と呼ばれ、現物取引と先物取引が同時に行なわれていました。
当事の欧州の取引所では、まだ現物の取引が主流でしたが、大阪では、「現物」より「先物」が取引のメインでした。

「正米取引」では米切手の売買を行ないます。
米切手は各藩が大坂蔵屋敷に保管されているコメの「倉荷証券」であり、持参人にコメを渡すことを約束した「受取手形」でした。
いつでもコメの現物が受け取れる証券であったことから、これは実米市場ということになります。
「正米取引」でも両替商が代金や米切手を貸し付ける制度があったので、すでにこの時代に株の「信用取引」にかなり近い取引が行なわれていました。

一方の「帳合米取引」は現代の商品先物取引にあたります。
いまの先物取引と比べてもその仕組みには大きな遜色のない取引がおよそ今から300年も昔に行われていたわけです。

取引は一年を三期に分け、約4ヶ月の期日を設けたもので、すべて差金決済する仕組みでした。
取り引きは百石を単位とし、その価格は1石当たりの銀表示で行い、現在同様に高くなると予想すれば買い、安くなると予想したら売って、買ったものは限月に当たる期日までに転売し、売ったものはその期日までに買い戻しして、その差額を現金で精算する差金決済取り引きでした。
証拠金と同じ仕組みの総代金の1%を「敷銀」として預けると言う方法だったため、レバレッジ効果も大きいことから現在同様に人気が高く、市場参加者はコメ商人はもとより大名・旗本・商家・豪農とさまざまでした。

また、受け渡しは4日目取引で「消合場」という取引の精算をする事務処で受け渡し金額の集計処理を行なっていました。

こうした幕府の監視するコメ取引の形態が、日本の証券取引の源流であり、1848年に設立された現在世界最大の先物取引所であるシカゴの商品先物取引所のシステムの起源とも言われています。

堂島はシカゴ取引所の本家筋

世界最大の先物取引所であるシカゴマーカンタイル取引所の訪問者向けの音声ガイドでは「この取引所のルーツは堂島の先物取引であり、私たちの市場は世界で最初に整備された日本の先物取引市場を参考に開設されました」と案内されているそうです。
また、シカゴマーカンタイル取引所の名誉会長レオ・メラメドも来日の際に堂島を訪れて大阪は世界の先物発祥の地であり故郷であると語ったそうです。
ちなみに2014年のメラメド名誉会長と安倍首相の会見の際の記事には、レオ・メラメドは第二次大戦中のリトアニア公使・杉原千畝に「命のビザ」を発給されたユダヤ人の一人とあります。
日本人の金融関係者が「先物のような高度な金融商品は金融の超先進国アメリカだからこそ作れたものだ」などと言った発言をすると、メラメドは現在の完成度の高い先物取引の仕組みはほとんど江戸時代の大阪のやり方を踏襲したものなのだと指摘するそうです。
こうした背景からアメリカの大学では江戸時代の堂島の先物取引の研究もされています。

余談ですが…、
第二次大戦終了時に伊400型の潜水空母や航空機で唯一欧米の航空機技術より優位性のあった紫電改などを、米軍はただ単に技術取得(伊400の技術は後の米軍原子力潜水艦のサブロックに応用されたとされますし、紫電改の自動遠心フラップの技術は米国の兵器に転用されたとされます)しようとしたばかりではなく、これらをそのまま自国兵器として運用しようとしたと言う話もあります。(ソ連からの船体・機体の開示請求などが原因で結局は廃棄されたようですが…)
こうした優れたものに対する評価や活用の姿勢が米国人の合理的な探求心、どん欲さともいえ、徳川吉宗・大岡忠相らの音頭とりで作られた大阪の先物システムはまさにそうした米国人らしい合理主義に照らしてみてもシカゴ市場で破綻なく引用できたシステムだったと言えます。

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