アルゴリズムトレード

アルゴリズム取引とは

アルゴリズムの本来の意味はコンピュータでプログラム処理する複数の手順の組み合わせのことです。
その意味ではエクセル関数などで処理できるテクニカル手法の一部もアルゴリズム取引と言えないことはないですが、通常「アルゴリズム取引」と言う場合には高性能のコンピュータで複雑なアルゴリズム計算を伴う超高速取引を指します。
従って誰にでも自宅パソコンでできるようなコンピュータ・トレードは普通は「アルゴリズム・トレード」とは言いません。

一般的に「アルゴリズムトレード」とか「アルゴリズム取引」と言われる手法には幾つかの定義があります。

アリゴリズム取引が普通のパソコンを使った取引と最も違う点は、超高速取引(ハイ・フリケンシー・トレーディング=HFT=高頻度売買)と呼ばれる部分です。
HFTは証券会社などの大口の利用者が取引所内もしくはそれに隣接した場所(コロケーション)に設置した高性能の自社サーバーを利用したシステムで、瞬きする間に数千回の取引ができます。
この超高頻度の取引によって一般投資家はその利益を掠め取られたり、予想を大きく狂わされるような動きが何度も行われていると考えられています。
また、証券会社など大口によるこうした注文はダイレクト・マーケット・アクセス(DMA)と言う直接発注型の電子取引執行システムに依っています。

アルゴリズム取引の普及と規制

世界では既に全取引の四割以上(アメリカでは五割以上)のトレードがアルゴリズム取引であると言われており(2017年現在)、これは言うまでもなく個人投資家の投資環境に多大な影響を与えています。
板をじっと見ている一般投資家が「ここだ」と思って買いを入れた時には、実はアルゴリズムが一瞬早く買いを入れていてその次の瞬間にはもう売りを入っている…。
こうした方法でスリッページ(執行から約定までの価格差)に相当するような細かい利益を先に得ている可能性があり、一般投資家はそのスリッページを掴まされているわけです。
一枚当たりの取引手数料の水準が我々とは全く違う大口投資家はこうしたことを何千回と繰り返し行えるわけです。
また、大量の注文を小分けしつつも一定の期間を定めてかけられたりすると、一時的に極端な値動きが起こり、システムトレードの損切りがこれにかかってしまうことも多いのですが、こうした値動きは数分後には何事もなかったような元の値水準に戻っていたりして、一般投資家は納得のいかない損切りを掴まされてトレード終了と言うこともしばしばです。
現在アメリカではこの手法に対する規制が議論されていますが、一般投資家の立場としては、今後是非各国でのフェアな環境整備が期待されるところです。

なお、2016年4月の新聞記事によると日本の財務省も超高速取引による相場の急変動などを無視できないものととらえたようで、金融庁がついにこれの規制に乗り出すと言う発表を行ったようです。
欧米ではすでに当局が超高速取引の規制に取り組んでいますが、これらの取り組みを参考に株価の乱高下の抑止を目的とした、ブローカーの届け出制度などを軸に、有識者会議の金融審議会で規制のあり方を話し合うとされています。

紛らわしい売買アルゴリズムとアルゴリズム取引の違い

最近ネット上ではシンプルな売買システムであるにもかかわらず、プログラムされていることを根拠に意図的に「アルゴリズム」と言う言葉を多用して、さも本物の「アルゴリズム・トレード」が一般投資家にも利用可能であるかのなようなと紛らわしい印象の売買ツールをよく見かけますが、「アルゴリズム取引」と言う言葉には金融工学や情報工学の複雑なロジックやHFTを用いた大型コンピュータで行うトレードを指すと言う点を理解しておく必要があります。
アルゴリズムを直訳すると「問題解決の手順」となるので、多くの情報商材の売買ロジックを「アルゴリズム」と呼べないこともないと言うところが、紛らわしい名称やキャッチフレーズ根拠のようですが、一般的に用いられる「アルゴリズム取引」と言う言葉は特に金融工学や情報工学は原則として高度な教育を受けた専門家が扱う手法であり、このためアルゴリズム・トレードでそれを扱うために必要なコンピュータの知識・技術もまた非常に高度で専門性の高いものであり、更にそこで用いられる機器や通信環境もまったく一般投資家の環境とは別物と言ってよいものです。
つまり情報商材のアルゴリズムを構成する「テクニカル分析」とは全く異次元のものです。

アルゴリズムトレードは巨大な資金で研究や投資環境を整備し、ITや金融工学の専門家を使って行うトレードであって、それをテクニカル分析ロジックのアルゴリズムと比較することはポルシェとママチャリを同じ乗り物と言うくくりで比較するようなものです。

一般投資家への影響

「アルゴリズムトレード」の手法は1980年代に指数裁定取引をコンピューターが自動的に執行するプログラムを「モルガン・スタンレー」が開発したことに始まるとされていますが、その後ネットが普及しコンピュータやシステムの精度が飛躍的に進歩した結果、この方法は今やマーケットのモンスターになりました。
今では人的判断では難しいシビアなトレードに次々に応用されることで、証券会社の自己資金運用などの大口機関投資家に大きな不公正性による優位性を与えています。
このため一般投資家がデイトレードで利益をあげるためにはこのアルゴリズム取引の特性を良く知った上で、アルゴリズム取引による相場のダマシに乗らないような売買戦略をたてる必要があると言われています。

アルゴリズム取引では一度の大口発注を行うことで発生するデメリット(マーケットインパクトなどの自己の投資環境への悪影響)を分散するために、自動で何度も注文を小分けして執行したり、質の均一化された注文を瞬時に(コンピュータによる人件費の削減)出せたりします。
また、24時間体制で大量のデータを瞬時に判断し、条件が揃えばいつでも確実に注文を出すことで、物理的には如何なるチャンスをもすべてあさり尽くすことができます。

投資家は市場心理を読むと言う行為で相場の先を予測しているわけですが、無感情に決められたルーティンを繰り返すアルゴリズム取引によって人間なら行わないような不自然な値動きが頻繁に起こっており、(ある程度それらの動きを理解できるようになるまでは)多くの一般投資家はダマシのようなその動きに日々翻弄されることになります。

余談ですが江戸時代の日本では旗振り通信や狼煙と言う方法で大阪堂島の相場の様子がわずか数時間で江戸や福岡まで伝わったとされますが、幕府は豪商にのみ有利なこうしたアンフェアな方法を禁止しました。
※この通信法は明治期に一時復活しています。
皮肉を言えば、堂島米会所の歴史や手法を参考にしたとされるシカゴ取引所を持ち、また幾つかの大学で江戸時代の日本の米相場を専門的に研究しているアメリカなら、こうした幕府の規制の歴史も是非参考にしてほしいところです。

アルゴリズム取引の種類

 TWAP注文

TWAP(Time-weighted average price)は大口の注文を一定の時間をかけて分割して行う方法です。
大量の注文を一度に出すと相場にマーケット・インパクト(その注文が引き金で市場価格に影響を与える)と言う現象が起きて優位な注文が崩れることがまります。
大量の注文ではマーケット・インパクト(その注文が引き金で市場価格に影響を与える)と言う現象が起きて優位な注文が崩れることがまります。
これを避けるために、商品・市場に併せて市場への影響を極力抑える注文ロジックのアルゴリズムに従った注文が、市場の反応を監視しながら時間をかけて自動的に行われます。
指数先物などの流動性の高い市場で2・3分おきに同じような注文が繰り返されるような場合には疑わしいケースです。


 アイスバーグ注文

大口の注文を一度に出してしまうと、その注文によって市場が影響を受ける-いわゆるマーケットインパクト、を市場に与える可能性が大きくなります。
マーケットインパクトによって、注文で意図した動きの反対に市場が動けば大口だけに巨額の損失を出しかねません。
このようなリスクを回避する目的で、大きな注文を一度に出すのではなくコンピューターが大口注文であることを市場に察知されない程度に小口に分割して一定のタイミングで注文を出します。
歩み値を見ると何人かの注文がたまたま集中しているような印象に見えます。
こうして大口の注文を隠すことで各種の注文リスクを回避します。


 ステルス注文

「ステルス」は、忍者戦闘機ともいわれるステルス戦闘機の「ステルス」と同じ意味、つまり見えない取引です。
これは市場に気づかれないようにカムフラージュして注文を出す方法です。
板を見ると板が無いように見えるのに、一般の投資家が注文を入れると瞬間的に約定します。
板の指値欄には大した注文もなかったはずなのに、コンピュータが板を見張っていて、板に見せ板操作などの注文が並んだ瞬間に即座にそれを食う注文を入れてきます。
見えるはずの板が見えないと言う手法です。
それによりアルゴリズム注文側は板操作の手法などまでを、ことごとく餌食にすることができます。


 ニュースに反応するアルゴリズム

経済指標の発表や社会の異変などの情報などのビッグ・データを監視するコンピュータが、必要な情報に即座に反応し自動的に注文を出すアルゴリズム取引です。
企業情報を監視し更新がかかれば自動的に注文を入れる…、地震速報を監視して一定の震度以上の場合売りを入れる…などの方法をとって優位にトレードを行います。
このアルゴリズムで常にチャンスを逃がさず、機会損失を減らしています。


 裁定取引

裁定取引とは必ず一定の価格差内にやがて収束すると言う特性を持ち、その特性を論理的に立証できる二つの商品の同時反対売買です。
コンピューターに理論的な連動性のある二つの商品(金融商品や銘柄)を監視させて、利益を見込めるだけの乖離が見られたら、理論的な収束値に向けて必ず差益を生み出せる注文を行う方法です。
一般投資家なら原則として、最初からある裁定ペアを対象として取引するわけですが、アルゴリズムでは監視できる全市場の裁定関係、もしくは疑似裁定関係にあるすべての組み合わせを瞬時にチェックできます。 この価格監視機能と超高速の発注性能を使って、(アルゴリズムで抽出した)利益を見込める注文をすべて利益化してゆきます。
また、裁定関係の者のうちベクトルが常に一緒のものを監視して、一方がわずかでも先行して変動したと解釈できる動きに合致したら、遅延した方を先行の変動方向に仕掛けて即座に利食うと言う方法も取られます。


 見せ板

見せ板を出し、値動きを活性化させ流動性を高めるアルゴリズムです。
大きな注文板(売買する意思はない)を出すと投資家はその板に反応し注文をいれます。
こうして売買と値動きが活性化します。
「相場操縦」ではなくて「活性化」が目的であるために違反行為にならないようです。
沈滞した相場をつついて動きを起こしその動きで利益を得ると言う、もみ合い相場などで有効な手法です。


 VWAP注文

VWAP注文はTWAP注文の平均執行価格をVWAP(取引価格÷出来高)に近づけることを目的としたものです。
TWAPではプログラムはほぼ板だけを見て定間隔で注文を出してゆきますが、VWAP注文では直近履歴の出来高分布を分析して注文価格の平均値が想定VWAPに近似するような注文を行います。
VWAPは市場で最も人気のある価格と考えられており、通常は高値と安値の中間あたりに収まっています。
このため、VWAPに近似した価格でポジションを持つことは投資戦略的に有利と考えられています。

  アルゴリズム取引への対応

このような取引が我々一般投資家の参加する市場で日々行われているわけで、考えればおそろしいことです。
ただここまでに述べたアルゴリズム取引のやり口をしっかり頭にいれた上で、リアルタイム・チャート・ソフトなどで特にナイトセッションをじっくり観察していると、だんだんとそれらしい動き(アルゴリズム取引とおぼしき動き)は気になってくるものです。
目が慣れてくると、多くの機関投資家が似たり寄ったりのやり口でそれぞれやっているために結構頻繁に見えてきます。
もちろん先読みは不可能ですが、相場を日々監視していれば一定の動きには後付けながら気づくことが出来るようになります。

例えばステルス注文などは出た板もないのに注文がすぐに食われるわけですから、結構その怪しさに気づきますし、板に反対側の注文が見えないにもかかわらず、出た注文を瞬時に食うのは我々の使っている注文環境やパソコンでは無理なのでアルゴリズムだと推定されます。
そうした動きを察知したら恐ろしい専門家集団が「今、特定のベクトルを狙って投資しようとしている」と判断することくらいはできるわけです。

アルゴリズムによって起きた急激な動きはほぼ元に戻るというような点が見えてくると、そうした動きで自作のテクニカル・ロジックが毎回損きりしてしまう悲しさに対して手当ができます。
アルゴリズムトレードは疑わしさが見え、該当しそうであれば「その投資の意図」を汲んで少なくともその意図に逆らわないようにすることです。

対抗するのは無理ですが、条件と熟練で、うまくすればそのトレードに一部便乗できる可能性はあります。
実際プロのトレーダーの中には利用可能なもの(僅かですが)は利用している人もいます。

先ずは、損切りルールが毎度毎度これに引っかからないように工夫することです。



 サイトからのお知らせ。
・07/27日、東証主体別売買動向表(部門別投資動向)の表記変更について。
     従来「百万円単位」で表記していましたが、視認性をわかり易くするため「億円単位」に変更します。

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