酒田五法の誕生ミステリー 三法と五法

五法と三法の関連性

宗久の「酒田五法」は先述の「相場三昧伝」の五つの教えをオリジナルとする考えとは別に本来は「宗久三法」の事だとする考えもあります。

「三法」とは「売るべし」「買うべし」「休むべし」の三つの手法の事で、これは「酒田五法」の中の「三法」のコア部分のことです。

「売るべし買うべし休むべし」あるいは「売り買い休み」と言われるこの心得の意味するところは「売り」と「買い」のエントリーおよびエグジットに関する手法と「手を出すべきではない」とされる「揉みあい相場」との付き合い方を説いたものです。

「三法」では、その中でも特に相場の七割がこれにあたるとされるトレンドの不明瞭な揉みあい状態(値動き変化の乏しい状況)に手を出さない思想である「休むべし」が重要とされています。

「宗久三法」が「酒田五法」のオリジナルと見る立場では、この「三法」にローソク足のフォーメーションを具体的に定義してみようとする過程で便宜上「五法」となったと考えられているようです。

「五法」の中に中途半端に「三法」があると言う点で「三法」が改良や加筆などを経て「五法」になったと考えられるヒントがあるようにも思えます。

酒田五法のバリエーション

「五法」と「三法」に見られるような曖昧な混沌は「酒田五法」には結構見られるものです。

たとえば「三空」はローソク足フォーメーションとしての「酒田五法」ではギャップが三つ連続して現れる形を言うものとされていますが、もともとのローソク罫線法では「三空」が現れるのを待つより「二空」が現れた時点で判断するのが現実的なものだったようで、これが「三山」「三川」「三平」などと命名した「三」の語呂合わせに乗じて「三空」としたとも考えられるのです。

ここにも本間宗久よりは後進の相場師によるアレンジや加作があった可能性が感じられます。

但し…、
法華経の十如是は仏教学の本家であるヨーロッパの仏教研究では「カシミール版」や「西インド版」法華経テキストの「五如是」を中国人「鳩摩羅什」が勝手に加筆して「十如是」とした偽作であることが検証されていますが、この鳩摩羅什の加筆・偽作によって「法華経」の価値が下がるどころかむしろ上がっていることを考えれば、後世の加作や偽作がオリジナルの価値を下げるとは言い切れない点はこの話の趣旨として理解しておいていただく必要があると思います。

さて、「酒田罫線法」には「利休茶道」のように、後にいくつかの流儀が生まれたと見る考えもあり、少なくとも五流程度、多めの見解では十派近い分派のような手法があるとされます。

その中で「三山」「三川」を「三尊」や「逆三尊」の形と見る流儀では「三尊」の見立てをあえて「三山」「三川」の二つに分けているところにやはり「五」とか「三」を付けた手法群のような語呂合わせ感があります。

比較的新しいと思われる流儀では「三山」は「三尊」と「逆三尊」のことであって「三川」は別のものとするものもあります。

また、伝統的とされるローソク足の足形や組み足の「憲法」(見方)が足形二・三本からせいぜい多くて五・六本までで判断するものであるにもかかわらず、三尊や逆三尊の様なアメリカ流のチャートフォーメーション(トリプルトップ・ヘッドアンドショルダー・トリプルボトム)を判断するには相当なサンプル数(場合によっては十数本からそれ以上)を要する点に違和感があると言う指摘もあります。

この種の指摘では「酒田五法」はニューヨーク流のチャート分析の影響を受けている形跡があるとされます。

生き残った手法

こうして「ローソク憲法(見立て法)としての酒田五法」の疑問点ばかりを挙げていると「酒田五法」はねつ造された価値のない偽作のような印象になるかもしれませんが、ここではむしろ「酒田五法」は江戸時代の本間宗久が作ったとするよりも近代・現代の相場師が日本の近世・近代の罫線法を研究し応用する過程で多くの考えを盛り込みつつ完成したものであることに価値があると考えたいと思います。

相場で最も必要な「冷静な判断」に従って「酒田五法」あるいは「酒田罫線法」を活用するには、ある意味その優位性、現代性を正確に理解すると同時に、その歴史的意味の神話的な部分や神秘的な部分の疑問点を一度ある程度はっきりしておくべきでしょう。

「移動平均」のジョン・グランビルのセミナーでは講師グランビルがアメリカ映画「十戒」で描かれているような預言者モーゼの衣装で現れて猿にピアノを弾かせたそうですし、デルバート・ギャンは「秘数」などと言った謎めいた考えを持ち出して「ギャンアングル」と言う珍発明の罫線を引くためのコンパス(文具屋のコンパスと同じもの)を相当な高値で売っていたそうです。

投資情報商材ではこのようにロマンの演出で顧客を集めようとする傾向が今も昔もあるのですが「酒田罫線法」もその有益性をうまく使うには、こうした過剰な演出部分は整理しておく必要があると思います。

「グランビルの法則」や「ギャンの価値あるルール」(ギャンアングルの方は困りもんですが)を有効活用している人は多く、そうした人なら、グランビルやギャンがセミナーで見せたいかがわしさが彼らの唱えたものの有益性を全否定するものではないことを理解しているでしょうし、そうした現在まで何らかの形で残っているような手法や格言にはそれなりの有効性があることは明白ですが、その一方で本当にいかがわしいだけの詐欺的な商品として消えてゆく手法や商材が世の中の大多数であることやそうしたものが神秘性や神話性と言った検証不可能なキャッチフレーズを並べていることも冷静に見ておくべきです。

「酒田罫線」や「ローソク足」を用いた情報商材にしてもそれを慎重に判断するためにはそれらを客観的に知ることは大事でしょう。

多くの怪しげな投資法が存在している現実を受け入れた上で、その中で生き残っている手法にはそれなりの意味を見出せる可能性があると考えるべきでしょう。

つまり「酒田五法」も成立には疑わしい点が多々ありますが、今生き残っていて多くの人に参照されていると言う点に価値が見いだせると言う事です。

  現代に機能する「酒田五法」

現代とは経済状況や情報面の大きく異なる江戸時代の一日五節の板寄せで行われていたコメ先物相場と現代の投資環境では似て非なる部分が多々あることは古い時代の相場格言などに現代化できないものが大多数である事でも理解できると思います。

「酒田五法」などの「酒田罫線法」はそうした古い時代に謎の超能力的な相場師が作った投資法と捉えるよりも、古い時代から伝承された相場手法を後の相場師たちが長い年月をかけて検証・修正・編作を重ねたものと考える方が実態に合っているし、またそう捉える方がその価値を正しく評価できると考えます。

「酒田五法」のキャッチには、よく「現代でも使える酒田五法」と言ったような表現が見受けられますが「酒田五法」などの「酒田罫線法」が比較的新しい時代まで相場師たちがそれぞれの実践手法をもとにアレンジし続けてきたもの(大正期昭和期のアメリカの罫線法応用も含めて)であると考えればそれが「現代でも使える」のはある意味当然のことであると言えます。



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