酒田五法の足形シグナル「三山」
天井からの反転相あるいは過熱感の崩壊前とされる足形とその変形・異形。
「酒田五法」の「三山」とは、トレンドの終盤の天井形を形成するとされる三連の山型のチャートフォーメーションの事です。
この「三山」の定義には流派・流儀が幾つかあるようで、例えばこれをローソク足のフォーメーションで見るとする方法とアメリカ流の「トリプル・トップ」(文字通り三山)や「ヘッド・アンド・ショルダー」(頭に相当する高い山の両方に肩に相当するやや低い二つの山を描いた形)などと同様にラインチャートのフォーメーションで見るとする方法があります。
また、個人的に知っている「罫線法」の本を見る限りでは時代の古いものはどうやらヘッド・アンド・ショルダーの日本名「三尊形」(本仏と脇仏の三体の仏像に例えたもの)を「三山」とし、それを天地反転した「逆三尊形」を「三山」の逆相として底値圏に現れる「三川」賭しているようですが、時代が下ると「三川」には「明けの明星」「宵の明星」と言う別の足形を当て、「三尊」「逆三尊」の両方を「三山」としているらしきものが現れているように思えます。
この辺りも「酒田五法」の語呂合わせ感が感じられるところですが、この項では「三山」の「三尊形」が数本のローソク足形で定義すると言う「酒田罫線法」でみるとイレギュラーであると考えて、「三山」は「三尊」「逆三尊」と言う特殊な見方とし「明星三川」を酒田罫線の形として紹介します。
また、これとは別に、このトリプル・トップ式の「三山」が先述のようにアメリカ流のチャート分析のため、伝統的な日本罫線とではないと言う事で「赤三山」と言う足形を持って伝統的な「酒田五法」の「三山」形だとする主張があります。
この「赤三山」形では対比形として「黒三川」と言う足形もあります。
こうしたバリエーションは「罫線法」では普通数本程度のサンプルでフォーメーションを示しているのに対して、アメリカ流のトリプル・トップなどではサンプル数が大きく異なることの違和感があり、この点を無視して無理やり「三尊」「逆三尊」などと「ヘッド・アンド・ショルダー」に日本名を与えてみても、それだけではやはりその違和感がぬぐいきれないと言った経緯から「赤三山」などのバリエーションが派生しものと思います。
ただ統計的に相関的な実用性を検証すれば、アメリカ流と「赤三山」「黒三川」ではどうしてもアメリカ流のチャート分析法に軍配が上がってしまうためにそちらがやむなく優先されていると言う事でしょう。
三尊天井は、上値を三度回ためしてみたものの、ブレイクすることのできない状態で、山谷の上下動を繰り返すように三つの山を現出させたものです。
三回山を山を作ったもののブレイクできない状態は上昇エネルギーの限界を暗示しますが、特に真ん中の山が高いものが現出すると天井の形成とその終焉の典型的なパターンとされます。
二つ目の山のを作った後の三度目の上昇で強気継続と言う可能性は残っているので、三つ目の山の崩れるのををみて弱気転換と判断します。
逆三尊底は三尊天井と真逆の形で大底を形成するときに出現すると言われています。
大底で形成されたという確認的シグナルとみられます。
逆三尊は最初のボトムと二つ目のボトムの安値を更新した時点では大底の終焉はまだ確認できない状態ですが、、三つ目のボトムが反発すると買い圧力の終焉と見ることができ、上昇トレンド派の転換が予想されます。
「赤三山」は天井近くで出現する三本の連続陽線のうち二本目つまり中央に位置する線の終値が上放れているもの言いますが、バリエーションとして中央に位置する線自体が他の二線より上放れて出現するもの、あるいはそれがギャップを空けて出現する形であるとする考え方もあるようです。
「黒三川」は「赤三山」の逆相で、底値圏で出現する三本の連続陰線の二本目、つまり中央に位置するものの終値または、線形自体が下放れて出現したもののことです。
いずれも、トレンド反転の予兆と見なされる足形です。
2000年代のネットのローソク足解説記事には、この「赤三山」「黒三川」が「三山・三川」のバリエーションあるいは参照形程度には紹介されていましたが、一部の罫線本では長期間のチャートによる「三山型」は日本罫線本来のスタイルではないとしていることもあってか、FX系のサイトがネットの主流となってから以降はこれらの足形の紹介記事はほぼ見かけません。
実はアメリカ式の「三尊形」(ヘッドアンドショルダーズ)とは別に酒田罫線にはオリジナルの「三尊足形」があったらしい形跡があります。
これは天井圏で数本以内の間隔で出現する高値が近似した三本の陽線足形で、真ん中にくる陽線の高値(もしくは終値)が一番高いのが理想形(中尊と脇侍の形)です。
これも強弱反転線とされるものですが、資料があまりないため詳細は不明です。
僅かにこの足型を取り上げているような「罫線本」ではこの足形がもともとあって、後にアメリカ三尊形に置き換わったと言う見解が述べられていますが、実はアメリカ式の長期間チャートで描く三尊形では「酒田罫線法」とは言えない(酒田の足形ではない)と考えた研究家がアメリカ三尊形を元にしてこちらを後から作成した可能性があるのではないかと言う疑いを(個人的には)持っています。
古そうな罫線本を当たってもこの足形や類似の足形が「毛抜き天井」以外になかなか見つからないこともその疑いの理由です。
「三尊天井」と言う呼称自体がモダンな響きなので、もし「酒田五法」のアメリカ型の三尊形を偽作とするならオリジナルとしては、この足形よりは「赤三山」の方が真実味が幾分高い気もします。
上図ではアメリカ式三尊形を一旦頭から離してこの足型の意味を吟味していただくために三種類のパターンを紹介していますが、図にある三つの「三尊形」はいずれも「酒田の三尊天井」の定義に当てはまるものです。
「酒田罫線」のとある流派ではアメリカ流の「トリプル・トップ」を「三山」としているのと同様に「ダブル・トップ」「ダブル・ボトム」を「大引け足(星足)M形」、「大引け足(星足)W形」などと呼んでいるようです。
「M」や「W」の文字はポルトガル人やスペイン人がやって来たと思われる天正年間から一部の人たち(当初はキリシタン、後は西洋医師や蘭学者)の間で知識としては共有されていたとは考えられますが、それが維新以前のコメ相場の相場師(キリスト教にも蘭学にも無縁の)に共有されていた可能性を受け入れるにはやや抵抗感があります。
現代の伝統的とされる日本罫線法にはアメリカ流のチャート・フォーメーション分析の思想が流入していると言うことは「M」「W」の例なども含めて多くの研究で指摘されていることです。
しかし、ここはむしろ「酒田五法」の伝統性を強調するようなややこじつけがましい説明を採用するより、本家のアメリカ製の説明や考えをそのまま「三山」に採用する方が投資手法としては有効と考えます。
つまり、いわゆるチャート分析やパターン解析によるトップ形成、ボトム形成のフォーメーションのバリエーションを出来るだけ参考にしつつ、その形成をより有効に見極められるために少しでも多くの「ネタ(パターン)」に精通することがトレーダーとしては有利なのではないかと思います。
余談ですが「日本罫線」にはアメリカ式チャート・フォーメーション分析法の分析期間と「酒田罫線」の(数本と言う)分析期間の中間程度のサンプル数を対象とした「大引け足(星足)」と言う「罫線法則」が(伝統的に)あって「酒田罫線」は「大引け足」(アメリカ流のフォーメーションに類似しています)を参照するものとする説もあるので、アメリカ流の手法を参照することは「伝統的日本罫線法」としてはある意味間違っていない方法だと言えるはずです。
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