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ソロスの再帰性論
 [ 再帰性論とは ]
ジョージ・ソロス(George Soros)
1930年8月12日 ブダペスト生まのユダヤ人投資家。
1969年にジム・ロジャーズと共にヘッジファンド、クォンタム・ファンドを設立。
毎年のように莫大な利益を上げることで史上最強の相場師と呼ばれ、また(ポンド売りで)イングランド銀行を破産させた投資家としても知られている。

「再帰性論」とはジョージ・ソロスがマーケットとそこに蠢く心理模様を説明するために用いた視点であり、またそれは彼の市場概念です。

再帰性とは鏡の中の自分が手に鏡を持っていてその鏡に鏡の中の鏡を持った自分を映しだすと永遠に同じ鏡の中にその二つの鏡の入れ子が映しだされてゆくような状態を言います。

物理学では元の状態に復元可能なものを再帰性と言い、数学でもポアンカレの回帰定理のような状態を言い、簡単にいえば、ある条件下で元の状態に収束してゆくようなものを言います。

ソロスの唱える市場の再帰性は、市場参加者の心理を重要視して、市場参加者のそれぞれの心理が市場や世情を認知すると、そこに一定の心理的な反応とその心理反応に伴う投資行動が生まれるわけですが、そこで生まれた各人の投資行動が行動の集合体あるいは相互集合体として市場に反映されると、その反映された状態がまた市場参加者に市場や世情として認知されてゆき、その認知と反応及び行動が再帰性を持って永遠に繰り返されているとする見方です。

多少喩えが違うかもしれませんが、ネットでは「卵が先か鶏が先か」的な永遠に結論の出ない設問が設問を生むような例で説明されたりしています。

ソロスが市場心理を重視しているのは、この再帰性と言う結論の出ない設問を、ハイゼンベルクの不確定性理論にヒントを得たような論理で「人間は自分自身が観察すべき社会に属している限り完全に客観的な認識は持てず、そのため人は常に思い込みで行動する」と言う論理を述べています。

不確定性理論とは…、光(光子)には波動の性質と粒子の性質があるのですが、光は粒子なのか波動なのかは人間が観測者として完全な客体になりえないために光子の不確定性は、つまり絶対に粒子か波動かを特定できないと言うことは確定している…と言うものです。

光の性質を(人間というこの宇宙の主体に属するものが)観測するためには光に光を当てるという影響を与えないとその性質を見ることもできないのですが、その光を当てるということで当てられた光の動きを変えてしまうために、正確な観測はできず、どこまで行っても統計的な性格しか知ることができません。

例えば体温計で人間の体温を図る場合、厳密に言えば体温計の示す温度は人間の体温と体温計のもともと持っていた温度の相関値であるわけです。

観測するための装置が完全に客観的なものではありえないという事になります。

実際には体温計のもともとの温度が体温に影響をあたえることはありませんが、こうした現象が量子力学のような超ミクロの状態では光子の観測のように無視できないものになります。

ソロスは自分が市場に参加している限り完全な客体として市場を観察することはできないとしています。

こうした人間の心理・思惑と市場の動きの相関性・再起性は、「市場には常に思惑のようなバイアス(偏り)が働いている」しまた、そうした「現在の(思惑の反映された)状況が、将来の展開に反映される」ことになります。

思惑によるバイアスは市場で相関・相殺する過程で、生存競争的に適者生存と言う選択にあい市場を支配するバイアスが残ると言うわけです。

つまりこうしたプロセスを理解することで市場のバイアスを読み取ることができると言う考えです。

更に市場にはこのようなバイアスだけでは説明しきれない潜在的なトレンドが存在しているようです。
これは個人個人の生存競争に参加するようなバイアスを超えた更に汎用的なバイアスといえるものです。
このバイアスと潜在トレンドが市場に反映されるとその反映された市場は、また参加者の心理などが織りなすバイアスとトレンドに影響を及ぼすことになります。

このようにして形成れる市場の動きをブームと言います。
ブームはさらにその勢いを強化するようなプロセスを経て加速され、それによってブームに懸るバイアスは容易に修正出来なくなります。
やがてそうしたブームは市場の要請を裏切る時が来ると要請側から修正が始まります。

我々の資金なら量子力学で言うマクロの世界のように市場への影響は微々たるものでしょうし、ソロスのような巨額の資金なら量子力学のミクロの世界のような原因と結果の相関的な影響を大きく受けるということかもしれませんが、自分の考え行動が市場に反映されると言うことを前提条件にすべきだとしています。

いずれにしても市場の動きの原理をソロスはこのようなものと考えているわけで、目の前の市場で展開される事象を自分なりに再帰性のメカニズムで説明してみると言う作業でバイアスとトレンドが相場観の参考になれば価値のあることです。

ソロスの再帰性論を理解するには市場の観察と理解と言うことに関する一定以上の経験が必要です。
再帰性論は経験の質によっては得心できることが多々あると言ったやや哲学的で難解な定義です。
一般投資家が参考できるように彼の言葉を紹介します。

スランプの時、まずすべきことは投資額を減らすことであって、損失を取り返そうとしてはならない。
また投資を再開する時も小さくはじめるべきだ。

市場を支配しているのは数学ではなく、人間の心理だ。

最悪の過ちは大胆でありすぎることではなく、保守的でありすぎることだ。
「なぜそれだけしか買わない?」。

投資は、本当にきつい商売だ。
恐ろしく消耗するし完全に的をはずすこともある。
夜になると考えこむばかりだ。
この商売には、普通以上の規律と自信が必要だし、基本的には冷徹でなければならない。

成功するためには、仕事を離れることも必要だし、時間を持てあますような状態も必要だ。

人々は、ソロスが間違いなど犯さないだろうと言う誤った認識を持っている。
ここは特に強調すべきかもしれないが、私は隣の住人と同じぐらい間違いを犯す。
ただ、私が自分で優れていると思えるところは、自分はよく間違いをおかす人間だと認めていることだ。
このことが実は私の成功の秘密だ。
私は、人間の認識力は、先天的に過ちを犯すものだと確信している。

多くの選択肢があった場合、選択された規則は厳密には適用されず、あとから反省的検証という作業が継続することになる。

単純でオーソドクスな考え方は現実とは大きく乖離した信念を生み出す危険がある。

弱者とは確固たる信念を持たない投資家のことであり、市場は常にこうした人々を完膚なきまでに叩きのめす。

自然科学は最も輝かしい人間の知的成果だが、その確かな基本思想は「自分の思考方法は間違いではないか」と言う可能性を疑うことである。

レバレッジを行うと、市場が予想通りに動いてくれれば抜群の業績をあげられるが、予想がはずれた時は、悲劇的結果を覚悟しなければならない。
最も判断に苦しむことの一つは、どのレベルのリスクが安全かということだ。
どんな場合にも使えるものさしなどない。
ケース・バイ・ケースで判断しなければならない。
最終的には、自分自身の内なる生存本能に頼るしかない。

まず投資し、そして後から検証せよ。

落ちるとこまで落ちた気分は、そう捨てたものじゃない。
もはや進むべき方向は、たった一つしかないからだ。

「市場が常に間違っている」というのは私の強い信念である。




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